【肛門】痔
俺には痔がある。
それもイボ痔だ。
肛門の穴のすぐ右に、ソイツはいた。
何度か引きちぎろうとした。
しかし神経が通っており、とてもじゃないが取ることはできなかった。
特にウンコをした後の疼きは耐え難く、寝る前には特に気になった。
まるで、近所のやかましい隣人のような煩わしさ?いや、そんなものよりもずっと近くて、鬱陶しい。
1度病院には行ったが、薬塗って治らなかったら物理的に切除すると言われた。
薬を塗っても治らなかったが、切除するのは怖かったので行かなかった。
こうなってしまえば、いよいよイボ痔を邪魔する物はおらず、俺の肛門に堂々と居座り、疼きを発し放題というわけだ。
なんとふてぶてしい存在だろうか、イボ痔ってやつは。
迷惑ばかりかけて、家賃も払わず、デカい態度でふんぞり返っている…………まるで俺じゃないかっっ!!!
親の抱く俺に対する気持ちに近いんじゃないだろうか、この腫れ物は。
ならば尚更、このイボ痔は切除すべきだったのではないだろうか?
可愛い子には旅させよって言うし……可愛くないけど。
しかし、俺に似てると考えれば愛着も湧いてくるもの。
弟だと考えれば可愛く感じる。名前だって付けてやってもいい。
座った時の違和感も、夜の疼きも弟だと思えば許せる。
そんなこんなで、イボ痔と生活を共にしてきたある日、唐突にソイツはいなくなった。
ウンコをした後に必ずきていた強烈な疼きが来ない。
鏡で見てみると、イボ痔はなかった。
いつの間になくなったのだろう?旅に出たのだろうか?
とにかく俺は晴れて、イボ痔という厄介者から解放されたのだ。
椅子に腰掛けても、もう、あの違和感はやってこない。
もはや、違和感がやってこないことに違和感を覚えるほどに。