お漏らし
今回はタイトルを見てもらったら分かる通り、汚い題材なので食事中には見ないことを推奨します。
前回が「留年」で今回は「お漏らし」……太宰治も驚く人間失格ぶりではなかろうか。
まず、言い訳から入らせてもらおう。
人間の生理現象とは、案外融通が効かないもので、眠ければ大事な会議中でもウトウトしてしまうし腹が減れば葬式中にでも腹は鳴る。
この理論でいけば、小便とて例外ではなく、俺が講義中にトイレに向かうも、膀胱が我慢出来ずに途中で漏らしてズボンをぐしょぐしょにしてしまっても何ら不思議な話ではない。
そうして、トイレに間に合わず鏡の前でズボンを濡らしたまんま立ち尽くす成人男性が出来上がった。
この時の俺は、かなり真面目な顔つきをしていたと思う。
股間さえ濡れていなければ、今後の日本の政治について悩んでいる1人の好青年に見えたことだろう。
しかし股間を濡らした状態で真剣な顔をする俺は「どうやって誤魔化そうか」という非常にスケールの小さな情けないことを考える留年してそう(してるけど)な大学生の出来上がりである。
人は焦るとどうしようも無いことばかり考えてしまう性質を持つらしく、「こんな時、仮面ライダーに変身できたら誤魔化せるのに」などと考えていた。
漏らしたのを誤魔化すために変身する仮面ライダーなど、間違いなく降板だろう。
しかし、これは決して他人事ではない。
もし今後、こういった会議中や仕事中にトイレまで間に合わず漏らしてしまった際、どのようにして誤魔化すか、一緒に考えてみて欲しい。
誤魔化し案その①
飲み物を買って何食わぬ顔で戻り、その直後に「しまった!」とわざとらしく飲み物を股間にこぼす。
これは本当にやろうとした。
しかしその時、たまたま教室に財布を置きっぱなしだったのでジュース1本買えなかった。しくしく……。
誤魔化し案その②
履いてるズボンを前と後ろを逆にする。
確かに、逆にすれば股間は濡れていないため、誰も小便を漏らしたとは思わないだろう。
しかしそれは、股間が濡れているヤツから、ケツが濡れている下痢便野郎にトランスフォームしてしまうだけだった!
結局俺は、人に見られる前に個室に入り鍵をかけ、トイレの芳香剤を塗りたくって匂いを消し、乾いてから教室に戻った。そして、
「先生、体調が悪いので帰ります(キリッ)」
「お、おう……?」
授業を受ける気力などとうになかった俺は颯爽と鞄を背負い、教室を立ち去った。
……鼻腔をくすぐるローズマリー(芳香剤)の香りを撒き散らしながら。